先学期初めて、ライデン大学法学部で成績トップの生徒だけが受けられる、Honours Collegeというプログラムの中のLaw, Gender, Race and Sexualityというコースを受け持った。私が普段受け持っている通常の講義は毎回50人を超える生徒がサインアップするのだけれど、Honours Collegeは少数精鋭という考えなのかその半数くらいがマックスだそうで、50ほどあった受講希望の中から26人ほどの生徒が参加した。
やはり少人数だと授業でできることの幅も広がる。講義もよりインタラクティブになったし、グループワークを課題にして各グループの研究発表を最後に企画したりした。そのおかげか、たくさんの生徒から嬉しい言葉、講義を始めた数年前の自分が聞いたら嘘かと思うような素晴らしいコメントをもらったりしたのだけれど、その中でも、生徒の一人がくれた、
Your lectures have changed my perspective on life and society, which I will take with me for the rest of my life. (先生の講義で社会や人生に対する視点が変わりました。今後の人生にずっと影響を与える講義になりました。)
というコメントを読んだ時には少し震えた。
そもそも私がアカデミアで仕事をしようか迷っていた時に決定的となったのが、今の上司であり私の博士時代の指導教官であったオランダ人教授との出逢いだった。私が学士時代オランダに留学した時に受けた「インドネシアの法と統治」や「法と文化」といった講義を受け持っていたのがその教授であった。その時に彼の講義を受けて学問は楽しいと実感したし、垣間見た彼の人間性は私の人生観にも影響を与えた。つまり、彼という教授が大学にいたことで、私の「人生が変わった」のだ。
振り返ってみると、私の人生の分岐点といえるようなところにあったのはいつも人との出逢いとその人たちから受けた感銘であった。小学校3年生の時担任だった先生。高校時代数週間きていた実習生。部活の顧問だった先生のアドバイス。上記の指導教官。他に友人や、本当に一度会っただけの人でも、彼らの言葉が今でも心に残っているものもある。こうやって挙げてみると教育者が多いことにも気がつく。色々な人との出会いが点となりそれが繋がって今の私がある。
学生を終え、娘を産み、この10年間、本当にがむしゃらに走ってきたけれど、そのおかげでなのか、世界中探してもこれ以上望むものは考えられないほどのポジションをもらえることになった。所謂、ドリーム・ジョブが、すとん、と、まるで当然そこにあるべきものように、私の手の中に落ちてきた。成長すること、学ぶことを貪欲にやってきたけれど、30代、これから10年は、もう少し、「私は他の人に何を与えられるのか」「どのようなポジティブな影響を与える存在になれるのか」ということにフォーカスをずらしていく時期かなと思う。それは学びとか知識の伝達という意味もだけれど、それだけじゃなく、人間的な、人格的な意味でも。私が今の上司に影響を受けたように。ただ彼が彼であることで、周りに良い影響を与える、人格者、あるいはもっとシンプルに、「善い人間」であること。
今ちょうど私の受け持つ講義がないタームで、充電中&次の講義に向けていろいろ構想を練っているところ。2月に始まる講義でも、生徒と、限られた時間で自分にできることを精一杯伝えたい、と、まだ会わぬ生徒たちに想いを馳せている。
0 件のコメント:
コメントを投稿