移動や出入国の規制が大幅に緩和されたこの1年。私が身を置くアカデミアの世界では、世界中の大学の同僚たちが堰を切ったように対面での学会やワークショップ、出張を企画・実行した年だった。私自身も2022年は1−4月はオランダ、5−6月は日本、7−8月の数週間はインドネシア、9−10月はオランダ+カナダとフランスに1週間ずつ出張、11月−12月は日本、そして年が明けたらすぐシンガポール、と、移動に忙しいダイナミックな一年だった。
3週間半のインドネシア出張も、二ヶ月間のオランダ滞在の時も、娘にはついてくるか聞いたのだけれど、「学校あるし日本にいる」と言って自ら日本に残る選択をした。二ヶ月間も娘と離れるのは生後初めてのことだったので不安だったのだけれど、彼女はそんな壁をひょいと乗り越えてしまったようだった。もう9歳。もうすぐ10歳になる娘は頼もしく見えるし、私は彼女が赤ん坊だった頃からずっと変わらず彼女を尊敬している。私はあまり「母親らしい」母親ではないと思うし、親として人間として未熟なところもたくさんあると自覚しているけれど、こうやって逞しく溌溂としている彼女をみると、大事な部分は体現して教えてこれたのかなあと思う。
赤ん坊や子供、ではなく、一人の人間として対等に接する。
必要なことは、「言うことを聞かせる」のではなく、それが必要な理由を彼女が納得するまで、彼女がわかるように、きちんと説明する。
感情的になったり何か悪いことをしたなと思った時は、自分の間違いを認めて、きちんと謝る。
彼女の気持ちを大事にして、理解しようと努力する。
彼女が辛い時、悲しい時、困っている時、悩んでいる時は、全力で力になる、サポートする。
今思いつく限りでだけれど、こういうことは意識してやってきた。見栄えのいいお弁当を作ってあげる、とか、学校の行事に積極的に参加してPTAにも関わる、とか、小さいうちから色んな習い事をさせる、とか、そういう子育てはしてこなかったけど。
この十年、肩肘張って子育てとキャリアをやってきた。一心不乱に、娘のために、自分のために、周りに批判されないように。でももう要らないものは捨てる。周りの目を気にすることとか、自分や他人をジャッジすることとか、自分や自分の行動を正当化することとか。余計なものを削ぎ落として、自分の好きなこと、信じること、心地いいことをする。他のものは要らない、追わない。
で、今年の目標。
(1)自分や他人や状況に理想を求めるのをやめて、現実を受け入れる。「ま、いっか」を心にとめる。
(2)堂々とする。自分の積み上げてきたものに自信をもつ。足りないものじゃなくて、持っているものに目を向ける。
(3)笑って一緒に過ごせる人と、安心できて居心地のいい人と、一緒に心地いい環境を作っていく。家を心地よい空間にするために工夫する。娘と一緒に、あたたかく心地の良い家庭をつくっていく。
そして最後だけど一番大切にしたいのが、
(4)人との出会いを大切にする。偶発的な出会いを「縁」に高めて、縁を、愛を、友情を、あたためる。哲学者アドラーやフロムがいう「愛する」技術と勇気を実践していく。フロムは著書「愛するということ」で愛やGiveすることについてこう説いている。
「自分の喜び、興味、理解、知識、ユーモア、悲しみなど、自分のなかに息づいているもののあらゆる表現を与えるのだ。このように自分の生命を与えることによって、人は他人を豊かにし、自分自身の生命感を高めることによって、他人の生命感を高める」。
肩肘張ってキャリアと子育てに必死だったここ10年間、なかなか優先できなかった、目の前の人にフォーカスしてGiveする、そして関係性を豊かにする、ということ。この10年間も土台作りに必要不可欠だったのだけれど、やっぱり人生は人と繋がるから面白い。繋がりを豊かにしていくのが醍醐味だと思う。
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