2012年9月13日木曜日

政府の目はどこにある?

ミャンマーでは最近、政府がセンサーシップ(検閲)の解除を表明した。

長い長い軍事政権のなかでずっと手に入らなかった”表現の自由”がついに国民の手に入ったのだ。

今まで抑制されてきた欲求が溢れ出すかのように、国民は本を貪り読む。
今まで検閲によって出版が禁止されていた本たちも書店に並ぶ。
”情報”への欲求に応えるように次々に新しい新聞や雑誌が発行される。
道端の屋台では毎日20種類以上もの雑誌・新聞が並べられている。


「センサーシップは解除された」

政府の発言はいかにも実現されたかのように見える。

しかし、数十年かかってしみ込んだ汚れを、一夜できれいにぬぐい去ることはできない。

センサーシップはなくても、政府の監視の目は依然としてそこにある。

つまり、出版前に”検閲”され出版を禁止されることはないが、

そのかわりに出版後に政府の目にとまる記事や本があれば、責任者は刑務所行き、ということである。

ミャンマー人で教育家かつジャーナリストであるAさんは、自身で英語学校を経営する傍ら、政治系雑誌を発行している。

よく食べ、よく笑い、ジョークもとばす彼だが、政治に対する姿勢は鋭く、ミャンマー外国投資法が改正される際にもネピドーにある国会議事堂へ赴きその場に立ち会ったという。

彼の政治思想はかなり左よりである。
もちろん、彼の発行する雑誌も政府の目にとまるかとまらないかのきわどいものが多いであろう。
政府にとっては目の上のたんこぶのような存在である。

そんな彼が麺をすすり、笑いながらこんなことを言う。

「数日後には刑務所に送られてるかもしれないな」

センサーシップを解除した今もなお政府の監視の目に晒されるこの状況は、今のミャンマーの現状をよく表しているように思う。

軍事政権は倒れた。

しかし、未だに国民はその影に怯えている。

長く、そして深く刻まれた傷跡は、一朝一夕で癒されるものではないのである。


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