2013年11月24日日曜日

Women really can't have it all?






自分の人生が、他者を中心として回っている、というのは、

奇妙な感覚である。

娘が産まれてから、いやたぶんもう少し前から、私の人生の中心は自分自身ではなく、小さな小さな娘になった。

Why Women Still Can't Have It All

「女性が未だにすべてを手に入れることはできない理由」

これは、アメリカで2012年に最も読まれた記事である。
アメリカの国務省のディレクターになった女性がキャリアと家庭について書いている。

私は妊娠中にこの記事を読んだ。たぶん、妊娠五ヶ月の頃だったと思う。

その時私を震撼させたのは、「But I realized that I didn’t just need to go home. Deep down, I wanted to go home. I wanted to be able to spend time with my children in the last few years that they are likely to live at home, crucial years for their development into responsible, productive, happy, and caring adults.」という言葉だった。
その時の私は、キャリアを追い求める女性にとって子供は(聞こえは悪いが)「負担」であり、その負担を背負いマネージしながら自分のやりたいこと(仕事)との両立をしているものだと思っていたから、子供との時間を過ごしたくて仕事を放って帰りたくなる、という心理が理解できなかったのだ。

皆、働く母親は時間になると子供を迎えに「帰らなければならない」ものだと思っていた。それをまさにキャリアウーマンの典型である著者が、子供との時間のために「帰りたい」というのか?

これは私にとって恐怖でもあった。

子供が可愛くなって、自分の人生、キャリアを追い求めるのをやめてしまうのが怖かった。子供ができて働き始めた時に自分がどう感じるか、予測できなかった。



大学院での研究が始まって二ヶ月。

今、著者の言葉がよくわかる。

毎日、6時頃になり、そろそろ娘を保育園に迎えに行くという時間になると、私はそわそわし始める。

やらなければいけないことはいくらでもある。家に帰ると勉強なんてほとんどできないので、お迎えの前の30分の時間で少しでも多くのことを終わらせたい。

しかし、それと同時に、30分でも早く娘に会いたいという気持ちがむくむくとでてくるのである。

夕方、保育園で娘の顔を見て抱き上げる瞬間が、一日で一番幸せな瞬間といってもいいと思う。

疲れている時も、彼女の顔を見て、抱き上げ、お互いのぬくもりを共有すると、不思議と彼女がパワーをくれる。

自然と、「産まれてきてくれて、ありがとう」という言葉がでてくる。





先日、初めての試みをした。

国際人権法の学会に娘を連れて行ったのである。

選択肢は3つだった。
1.娘を誰かに任せて、一人で出席する
2.娘を連れて出席する
3.出席しない

当日になっても、迷っていた。

任せることもできたし、家に帰ってゆっくり過すこともできた。

学会の雰囲気もわからなかったし、ベビーカーが入れるスペースがあるかどうかもわからなかった。

でも、娘を連れて出席すると決めたのには2つの理由がある。

一つ目は、これからこういった娘を連れて行かないといけない機会もあるだろうと考えたこと。周りの人の反応、娘の反応、そして自分自身の反応もみてみたかった。

二つ目は、周りの人に「見せる」ため。でもこれにはリスクも伴った。うまくいけば「子供を連れてでも学会に来られる」というイメージを与えることができるが、うまくいかないと反対に「やっぱりだめじゃん」となるからである。

娘をベビーカーに乗せ、会場に入る。

元欧州裁判所裁判長のコスタ氏の講演を兼ねていることもあり、続々と人が入ってくる。ほぼ満席である。

周囲の視線を感じながら、私は「連れてくるのが当たり前」のような顔をしようと努めていたが、内心はかなりナーバス。

講義中も、娘が少し声を出す度にすかさずおしゃぶりを咥えさせたり、お茶をあげたり...

極め付けは、泣いたら外に出るつもりで近くに座っていた扉が、いざというときになぜか開かない。

ぐずる娘を抱えて扉に向かうが開かず、すごすごと席に戻って娘をあやす...そんな姿を見て、良いイメージを持つ人なんていないだろうな...と情けなくなり...

今日娘を連れて出席するとという選択を後悔しはじめていた。

なんとか休憩時間になり、その後は会場の外で娘をあやしながら途切れ途切れに聞こえる講義を聞いていた時。

会場から一人の女性が出てきた。名札をみると、弁護士とある。

「頑張ってくださいね」と声をかけられた。

「私も昔は子供を連れて学会に行っていたから」

見知らぬ女性の一言で、これほど勇気づけられるとは思わなかった。

後悔が、来てよかったという思いに変わり始めた瞬間だった。

そして、「懇親会、お金払ったんだけど行けなくなっちゃったから、よかったらどうぞ」と譲ってくれたチケットで向かった懇親会でさらに意外なことが。

女性の参加者が次々と「私も◯歳の子がいるからよくわかります」「こういう風に、ちゃんと連れてきているのを見せてくれたら、他の人も以後やりやすくなるからね」「いつも人に任せられるわけじゃないし、かといって学会に行かないとチャンスから遠ざかってしまうしね」と声をかけてくれるのだ。

迷惑に思っただろうなと思っていたコスタ氏も私に近づいて一言「Congratulations!」(おめでとう)「She is the youngest one ever who attended my lecture!」(私の講義に出席した中で最年少だよ)と。

更には主催者の一人も「いや、あなたも赤ちゃん連れてきてるし、次からはやっぱり託児所をつけないとね」と。

...なんだか、いつのまにか出席したことが意外にも良い影響を与えていたみたいだ。

もちろん、励まし、賛同してくれる人だけではないのはわかっている。

学会に子供を連れてくるなんて、と批判的にみていた人もたくさんいると思う。

ただ、私はあの弁護士の女性のように、「私もやってたから」と、他の女性の選択肢と可能性を広げる一つの例になりたいと思う。

私自身は批判されることもあるだろうし、冷たい視線をあびることがあってもいい。

「常識」からが外れた自分の行動を周りに見せることが、人々の可能性を広げられれば、本望である。




Women can't have it all?

女性は全てを手に入れることができないか。

私の意見は、そんなのNo one can have it all. でも、Women can have it both.

子育てか、キャリアか。

どちらかを選ばなければならない時代は、もうおわり。

どちらも、諦めなくていい。
いつまでも欲張りな私はそう思う。