2011年10月28日金曜日

オランダ、ヨーロッパの移民政策



European Migration LawというMoot Court(模擬裁判)の授業が終わりました!
Moot Courtは和訳すると模擬裁判だけど、日本でやった模擬裁判とはミーティングの方法も、pleadingの方法も全く違って、その違いがなかなか楽しい。
2回講義+Moot Courtっていうのを違うトピックで3セット繰り返すんですが
1回目のMoot Court 英語を理解するのに必死。ちょっと待って!
2回目 お、流れがわかる。judgeに立候補してコメントまでしちゃったり。
3回目 原告被告それぞれの主張を理解して批判的に質問できる。
っていう自分の中の進歩が見えて、それもinteractiveな授業の醍醐味かなって思います。

ミーティングの方法の違いについては、大きく分けて2つ。
ミーティングの長さと、発言の数。
日本で模擬裁判をやった時には毎日集まって何時間も一緒に調べつつ議論しつつやってたけど、
こちらのミーティングは1回。約1時間で終わります。
もちろんそれまでにcaseを読んで、資料を読んで、自分なりの論理を組み立ててくるのが前提。
productivityという面で個人的にはこちらの方法の方が好き。
でも日本での方法も、チームワークというかチームのメンバーの仲を深めるのには断然効果的だと思います。欧米の個人主義とアジアの集団行動の特徴がでてる。
あとは発言の数。
どちらが多いかって?それはご想像におまかせします。
ヒント。こちらでは、議論が終わるのを待たずに割り込んでいかない限り発言できません。

European Migration Lawを勉強してて驚くのが、casesを読んでると被告がオランダのものばかり、ということ。
それだけオランダでは今、移民に関する法律についての議論が持ち上がっているんです。
現在、オランダの人口の約20パーセントが異国の背景を持っている、つまり少なくとも片親が外国からの人間。
特にアムステルダムは世界でも有名な国際都市で、数々の国からの多くの外国人が住んでいます。
他の法制度と同じように、移民政策にもリベラルな姿勢を示していたオランダですが、その結果移民が増え、最近はその移民政策に変化が見られます。
その一つが、オランダ政府が移民に対して課しているcivic integration examination
それがEU法の原則の一つである”非差別原則”に違反しているか否かというもの。
その試験の内容は、オランダの言語や歴史、文化にちなんだもので、文化も言語も異なる外国から来る移民がオランダ社会で快適に暮らしていくために必要なものである、というのが試験の目的。
しかし問題は、この試験の対象者が、EU加盟国、スイス、オーストラリア、カナダ、アメリカ、ニュージーランド、韓国、日本国民以外であること。
その背景には、以上の国の国民であればオランダで生活するのにそれほど問題がないので試験を受ける必要がないことがあります。
免除された人たちにとっては問題ではないんですが、対象者にとっては、試験の準備にかかる時間や費用(試験自体が350ユーロとかなり高額であることも負担。落第した場合は次の試験でさらに350ユーロが必要。)を工面することは難しい場合が多いんです。
特に対象とされている国々では平均所得も教育水準も比較的低く、彼らにとってかなりの負担であることは想像に易い。
実際の例が私がオランダで出会ったケニア人の女性。
オランダ人のパートナー(結婚ではないけど”パートナー”という制度がヨーロッパではよく見られます)がいる彼女でも、試験の準備や手続きにかなり苦労したといいます。
彼女は試験に合格して現在オランダに暮らしているんですが、彼女の友人の中には試験のせいで帰国しなければならなかった人もいると語っていました。

これが非差別原則や様々な人権法に違反するか否かは議論が分かれるところ。
私の個人的な意見としては、オランダ政府はせめて条件を引き下げるべきだって思う。
まず試験の費用。
 350ユーロは対象国の大半にとってかなりの高額で、それがハードルとなっていることは、試験費用を引き上げた時点から受験者が減ったという事実から考えても明らか。
オランダ政府が表明するcivic integration examの目的は理解できるけど、オランダでの生活に慣れるのを助けるための試験というならば試験費用を高額に設定することは逆効果じゃないの?
それに、「オランダに入国する前に合格しなければならない」という条件は対象者にとって過度に厳しい。
オランダから遠く離れた文化の違う国の国民ならなおさら、彼らの母国で試験の準備をすることは難しいでしょ。
オランダに実際に行くことが文化や言語の理解の助けになることは間違いない。
そうすることで少なくとも対象者も試験を受けオランダに移住する平等な機会を得ることができる。

ただ特にinternal marketのFree movementが保証されているEU内では第三国からの移民の問題はかなりsensitiveな問題で、ここでは紹介しきれないけど、
日本のような島国で移民政策を厳しくしている国に住んでいる人にこそ、
移民問題について今一度考えてみてほしいと思います。

2011年10月13日木曜日

留学先からみる母国

ライデン大学って、実は世界で初めて日本語学科ができた大学なんです。

そして今では、オランダで唯一の日本語学科がある大学。

必然的に、日本語を勉強したいオランダ人はみんなライデンに来るわけで。

毎年100人を超える学生が新しく日本語を学びにくるそうです。

言語やアジアの研究でも有名で、図書館に行くとアジアのいろいろな国の本、雑誌がうじゃうじゃあったり。

外をランニングしてたらいきなり日本語で話しかけられて(オランダ人ね笑)そこから仲良くなったり。

毎年長崎大学に留学する留学生が大勢いて、もちろんその人たちは日本語ペラペラ。(長崎で英語話せる人なんてなかなかいないもんね。笑)

タンデム(語学の相互学習のこと。私は日本語を教える代わりにフランス語を習ってる)のオランダ人の家に行くとルームメイト全員簡単な日本語がはなせたり。もう一度言います。みんなオランダ人だからね。笑

そういう環境にいると、日本人としてのアイデンティティみたいなものを実感させられます。簡単に言っちゃうと、「ああ、私って日本人なんだなあ」って。

Japan film festival っていう映画祭に連れて行ってもらって、普段見ない邦画を観たり(なんでオランダに来て日本の映画観にいかなあかんねんって文句言ったらいいからいいからって無理矢理連れてかれた笑)

そこでお寿司らしきもの(sushiって呼んでたけどあれは寿司じゃない。だって巻きの中に生の人参とか入れんねんもん。みりんをつけて食べてた人もいた)を食べ(させられ)たり

大学が開催していた「Japan triple disaster」というイベントに参加して3.11に日本で起こったことの影響をdiscussionしたり

「外」から日本を見つめ直してみると境目が見えてくるというか。


タンデムに話を戻します。

私のパートナーはオランダ人とフランス人のハーフで(両方のパスポートを持ってるらしい)

お父さんはフランス人の写真家(とっても素敵な写真を撮る方です。サイト)

お母さんはオランダで教師をしていて

本人は生まれてからずっとオランダに住んでる。

オランダ語、フランス語、英語、日本語、さらに今中国語も勉強してる言語学者なの。
(ちなみに5カ国語話せる人はこっちでは珍しくありません。オランダの高校では全員が英語とフランス語とドイツ語を勉強するらしい。)

やたらカジュアルな日本語を話す人。

いきなり電話して来て「sushi arukara ie koi」とか、フランス語を習ってるときも「hai kore yome」とか命令口調なの。本人はジョークだって言ってるけど笑、敬語が苦手で今特訓中。

そうやって日本語を教えてると、普段なら気づかない日本語の難しさを実感します。

例えば数詞。

一匹、二匹、三匹。

これ読むと

いっぴき、にひき、さんびき

あれ。なんで数によってひき、ぴき、びきって変わるの?

発音上の問題( aが母音の前だとanに変わるようなもの)なんだろうけど、日本語を学ぶ人にとっては厄介な問題のひとつらしいです。

あと漢字。日本語も中国語も勉強している人が多いから、漢字の読み方が違うのはなかなかの難関みたい。

同じ漢字でも意味が違ったり。漢字が日本に来た時に変わったんだろうね。

例えば「鮪」っていう字。

日本語ではマグロなんだけど、中国語ではチョウザメの意味なの。

それは日本に漢字が渡って来た時に、「鮪」の文字と大きな魚の絵が書かれた巻物で伝わって来たことから、当時の日本人が「この大きさからしてマグロだろ、きっと。」

と勘違いしたことからと言われています。へえ。

あ、ちなみにこれもそのタンデムから教えてもらいました。笑



外から見る日本は、内から見る日本とは少し違って見える。

これも留学の醍醐味の1つかもしれません。